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100m。


オリンピック選手なら10秒と掛からず駆け抜けてしまうし、
常人だって、20秒と掛からず走破することが出来る。
俺の実家(ド田舎)なんて、隣りの家まで200mくらいあるので、
その半分の距離だ。散歩してたって少しモノを考えている間に
通り過ぎてしまうような、日常的にはあまりにも何でも無い距離である。


が、


このたった100mを、


俺は今までの人生で
こんなに長いと感じたことはなかった。


半分スラムと化した小汚く細い道。
壁には明らかに立ち小便の後と思われるシミがクッキリと残り、
アルコールが混じったようなヒドいアンモニア臭を発している。
貧相に痩せて皮膚病だらけの犬が反対側の歩道を忙しく嗅ぎ回る。
ボロを纏った老婆が「金をくれ」と藁のように細い腕を付き出し、
目つきの悪いガキや、何をしているのか分からないようなオヤジが、
通りにポツポツと立ったり座ったりして暇を持て余している。
何処かから、俺を品定めするような視線を感じる。
若草のようなマリファナの匂いが鼻の奥をかすめる。

車掌が言っていた目指す通りは、ここに比べて
格段に明るい光を放ち、角には何かの屋台が湯気を立てているのも見える。


その距離約100m。


バスから放り出された俺は、大切なカメラが入ったリュックを
体の正面に抱え、出来るだけ平生を装って、何食わぬ顔で
その目指すべき通りに向かって歩き始めた。

まず、ラテンアメリカの国々で一番耳にするのが
「首閉め強盗」

夜間、人気のない道などで、突然後ろから首を絞められ、
あっという間に気絶させられ、その間に荷物を根こそぎ盗られる
という、
聞いただけでも背筋が凍るような強盗である。
しかも、場合によっては真っ昼間、白昼堂々、人気がある場所でも
襲われたという話しを耳にする。もちろん、目撃者は見て見ぬ振り。
何故なら、そのことを抗議したり、犯人を捕まえようとしたところで、
自分が殺されてしまう可能性もないわけではないからだ。
比較的安全な大通りでさえ、脇道から突然手が伸びてきて
首を絞められたなんて話しも時折耳にする。

それに、ひったくり、ナイフ強盗、拳銃強盗、等々。

旅行者が殺されたなんて話しは南米ではあまり耳にしないが、
いずれにしろ、あらゆる犯罪に巻き込まれる可能性があるのが、
ラテンアメリカ。君子危うきに近寄らず。
人気のない場所には行かない、
周囲には常に気を配る、
怪しいヤツには付いて行かない、
白タクには乗らない、

全て鉄則である。


が、自分のマヌケなミスのせいで
図らずしも危険地帯に実を放り出すハメになってしまった俺。


とりあえず、安全な通りで降ろしてくれなかった車掌に
呪いの言葉をブツブツと吐きつつ、背中いっぱいに
冷や汗を滴らせながら薄暗い小道を歩く。


嗚呼、コレで身ぐるみ剥がされたらどうしよ?

現金やカード、パスポートは宿だから、旅は続けられるけど、

カメラが無くなったら、旅のモチベーションもなくなってしまう。

予算内で買えるような安物のカメラではダメだ。

嗚呼、旅の神様、

どうか、俺を無事に宿まで帰らせてくれ…頼む!!!!

まだか…

チクショウ、まだ遠いじゃないか!!

100mってこんなにあったっけ?

クソゥ、絶対に無傷で辿り着いてやる…!!!!





DSC_8668.jpg





もうもうと湯気を立ててトウモロコシを湯で揚げている屋台の前に
辿り着いたときには、とりあえず心底ホッとした。
そこは石畳の歩行者天国になっており、両側を商店や食堂、屋台が
びっしりと立ち並び、大勢の人が行き来していた。

とてつもなく長い100mだった。

目の前に案内の看板が出ており、その通りを700m直進すれば、
アルマス広場に出られると書いてある。
と、いうことは、俺は旧市街セントロの東北に来ていることになる。
とりあえず、自分の居場所は分かった。

が、油断は出来ない。

何しろ、この旧市街一帯も夜間は治安が
あまり良くないことで知られており、夕暮れ以降は、
地元民は兎も角、旅行者はあまり近づかないのが一般的だ


さっきの通りに比べたら屁みたいなもんだが、
それでも両側には薄暗い小道がいくつもあり、
全く気を抜けない状況であることには変わりない。

それに、



俺は何処からバスに乗ったら
宿まで帰れるんだ?





何しろ、旧市街に来ることさえ初めてである。



とりあえず、セントロの中心である
アルマス広場の方向に歩いて行くことにした。
リュックを抱えながら暫く行くと、大きな橋に差し掛かった。
どうも、さっき越えたリマック川に掛かる橋らしい。

と、その橋のたもとに警察官が立っているのが見えた。

そうだ、この警察官に聞いてみよう!!

「Desclupe(スミマセン)!!」

平均的に小柄なのペルー人の中にあって、一際デカイ、
屈強な体躯の警察官がジロリと仏頂面で、
頭ひとつ分上から私に視線を落とした。

「英語は出来ますか?」

私が観光客だと分かると、さっきまでの仏頂面を崩し、
途端に愛想の良さそうな目で微笑みながら「Yes」と答えた。
ウホッ!!ラッキー!!!!
ほぼ英語なんて通じないこの国にあって、
警察官で英語が通じるなんて奇跡に等しいことだ。

「道に迷ってるんです。タクナ通りまで行きたいんですが、
何処でバスに乗ればいいんですか?」

「そうかそうか、それならこの橋を越えて右に曲がって、
3ブロック進んだ大通りでバスを拾えば行けるはずだよ」

「おぉ、ありがとうございます、助かります」

「いやいや…そうだな、この時間は危ないから、
私が近くまで案内してあげよう



うぉぉぉぉおおおおおお!!!!!


何という幸運!!!!!




この大きな体の人の良い警察官、名前をアントニオと言い、
リマの大学を出たインテリのエリートで、毎日観光地の街頭で
目を光らせる観光警察として日夜職務に励んでいるそうだ。

他愛もない話しをしながら、夜の街を歩く。
警察官が一緒なら、こっちも心強い。
周囲を気にせずに
夜道を歩けることの素晴らしさよ!!!!


日本では当たり前のことが、こっちでは当たり前ではないのだ。

結局、本当に大通りの近くの安全な道まで案内してくれた
アントニオと固い握手を交わして別れを告げ、元気に目指す道へと歩き出した。


DSC_8571.jpg
↑そう、愛だよな、愛!!


本当に、旅というのは「捨てる神あれば、拾う神あり」だ。

緊張の糸が切れたからか、猛烈に腹が減ってきた。
そういえば、昼メシを食って以来何も食べていない。
食堂らしきものが見当たらないので、道沿いの商店で
アイスクリームを買って、ソイツをベロベロしながら、
大勢の人がそぞろ歩きをする通りを眺めていた。

みんな、もう遅いし、それぞれ自分の家に帰って行くんだろうな。
みんな、いったいどんな家に住んでて、どんな家族構成で、
どんな風に生活してんだろ?

平和な気分でニコニコしながらアイスを食っていた。


が、この時はまだ知らなかった。



もう1度、いや、更にもう1度、

神に捨てられるということを。




アイスを食い終わり、大通りに出た。
どうやら、先ほどバスで通った大通りのようである。
ってことは、この通りの反対車線に渡れば、
目指す西側に向かって走るバスが捕まえられるはずだ。
幸い、すぐ目の前はバス停。大勢の人が自分のバスを待っている。

Yes、ツイてる!!

早速反対車線に渡りバス停に立っていると
程なく「Tacna」と書かれたバスが目の前に停車した。
車掌に「タク行きか?」と聞くと「Si!!」という返事。
今度は方向的にも間違いない。
今度こそ、目指すタクナ通りまで帰れるはずだ!!
そう確信した俺は、意気揚々とバスに乗り込んだ。

DSC_8612.jpg



2分後。


車掌に突然「降りろ!!」と促される俺。


えっ!!??


何?


タクナまで行ってくれるんじゃないの?


とっさのことに混乱するも、「そうだ!!」と思い出し、
取り出したのは宿の名刺。そこの住所を指差し、
「ここのタクナに行きたいんだよ!!ここじゃないんだよ!!」
と全力で主張するも、早口のスペイン語で何か言いながら
首を横に振るばかりか、「さっさと降りろ!!」と顎を突き出す。

「もういいよ、降りりゃいいんだろ、降りりゃ!!
いいよ、降りるさ!!!!バーカバーカ!!」


訳の分からぬままバスを降ろされて腹を立てる。

全く、最初のバスといい、今回といい、この街のバスの車掌どもは
どうなってんだ!?何でこんなにいい加減なヤツらばっかなんだ!!??
チクショー!!折角帰れるかと思ったのに、振り出しに戻っちまったじゃねーか!!

またしても呪いの言葉をブツブツ吐きながら通りに立っていると、
程なくして、同じく「Tacna」と斜体側面に書かれたバスが目の前に停まった。
バスの入り口から半分身を乗り出して目的地を大声で叫ぶ車掌に尋ねた。

「タクナまで行きたいんだけど」

「ん?」

「だーかーらー、タクナまで行きたいんだけど!!」

「はぁ?」

「何言ってんだオマエ?アホか?」とでも言いたげな
顔で俺を見るバスの車掌。その人を小馬鹿にしたようなツラに、
ただでさえ立っていたハラワタが益々煮えくり返ってきた。

「タクナだよ、タクナ!!何でわかんねーんだよ!!!!」




「タクナはここだよ!!!!」





えっ!!??





とっさに地図を開いてみる。



あ、ホントだ




はい、




一番バカはだ~~~~れだ?








僕でぇぇえ~~~~~~~す!!!!



CIMG0202.jpg
※注 左上の割り箸2本刺してるバカです。





そう、タクナ通りは2本あったのだ。
しかも、俺の宿がある方のタクナには、
小さく頭に「Jr」と書いてあるではないか!!

うーん、確かに宿のある方のタクナは小さい通りだし。

うん、どう考えても交通の要所じゃないよな。

うん。おかしいと思ったんだよなー。


はっはっはー。


ははっ、はっ、はっ…は……はぁ………


俺のマヌケェェエエエ!!!!!


というわけで、タクナの近くの大通りである、
「ラ・マリーナ」地区まで行くバスを探すことに。
が、来るバス来るバス、どのバスに聞いても
「ラ・マリーナには行かねー」と言われるばかり。
どうも、この通りではそっち方面に行くバスはないらしい。

じゃあ、しょうがない。

多少高くは付くけど、タクシーで帰ろう。


通り掛ったタクシーを捕まえて、宿の名刺を見せ、
「ラ・マリーナまで行ってくれ!!」と尋ねる。


4台連続

「え?何処か分からないからイヤ」

若しくは、

「え?遠いからイヤ」


と断られる。



オマエら、タクシーだろぉぉおおお!!!!


もういいッス。

結局、行きに通った「ブラジル通り」に向かうバスを発見した俺は、
そのバスでブラジル通りの終点まで乗り込み、
30分程、あまり人気のない夜道をまたしてもビクビクしながら歩き
どうにかして宿まで辿り着いたのだった。

時計の針は夜10時半を廻っていた。



ホントは7時半には帰ってる予定だったのに。




無事に宿に入った時は、本当に膝から崩れ落ちそうになった。

心身ともに疲れ切った体に流し込むビールは、
五臓六腑に染み渡り、つくづく、
生きていることの喜びを実感した。

DSC_8580.jpg


翌日、荷物を纏めて昼過ぎにクスコに行く為のバスに乗るべく、
バスターミナルに行こうと宿の近くの通りを歩いていたときのこと。

お揃いのベストを着たオッサンたちが6人乗ったワゴン車
俺の横に停まると「ヘイ、アミーゴ!!何処に行くんだ?」
と声を掛けてきた。

「Cruz del Sol(バス会社の名前)までだよ」と答えると、


「このあたりで最近強盗が出たから危ないぞー。
タクシーで行けー、タクシー!!」



えぇぇえええええ!!!!


そんなところを昨日の夜、


ひとりで歩いてきたのね。




どうやらオッサンたちは警察ではなく地元の自警団のようで、
パトロールの真っ最中にたまたま俺の姿が見えて、声を掛けてくれたようだ。

親切なオッサンたちは、
通りでタクシーを捕まえてくれた上に、
値段交渉までしてくれて、格安で料金を纏めると、
「良い旅をな~」と手を振って見送ってくれた。




何ていい人たちなんだ、ペルー人!!



昨日の警察官アントニオといい、このオッサンたちといい、
本当にペルー人は親切で優しい人が多いと思う。


オッサンたちの人の良さに感動しつつ、
クスコに向かうバスターミナルへタクシーに揺られていったのだった。



ペルーの人の良さとペルーの恐ろしさ。

そして自分のマヌケさ。


色んなものを同時に味わった、
非常に色濃いぃぃいいい
2日間だった。

DSC_8669.jpg


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